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墓じまいで取り出した遺骨の行き先は、大きく6つあります。合祀墓、個別の永代供養墓、樹木葬、納骨堂、散骨、手元供養です。ただし、行き先を選ぶ前に確かめることがあります。それは「遺骨が何体あるか」。先祖代々のお墓では、開けてみるまで分からないことがほとんどです。
体数が分からないと、受け皿の費用が決まりません。骨壺がなく土砂だけが出てくることもあります。この記事では、形式の説明よりも先に、実際に出てきた遺骨をどう扱うかという手元の実務をお伝えします。

60代女性

案内役
墓じまいで出てきた遺骨は、まず「何体あるか」を確かめます
先祖代々のお墓では、遺骨の体数は開けてみるまで分かりません。何十年も前から使われているお墓では、ご家族の記憶に残っていないことがほとんどです。
体数が、受け皿の費用を左右します
墓石の撤去費用は区画の広さで決まります。一方で受け皿の費用は、体数ぶんかかることが多いものです。ここが総額の読みにくさにつながります。
| かかるお金 | 決まり方 | 体数との関係 |
|---|---|---|
| 墓石の解体・撤去 | 区画の広さ・重機の入りやすさ | 影響しません |
| 閉眼供養のお布施 | 宗派・地域・お寺との関係 | 影響しません |
| 受け皿(納骨先) | 施設の料金設定 | 体数ぶん必要なことが多い |
| 洗浄・乾燥・粉骨 | 依頼先の料金設定 | 体数ぶん必要 |
合祀墓であれば1体あたりの負担は抑えられます。それでも体数が多ければ積み上がります。見積もりを取るときは「体数が確定していない」と伝え、体数が増えた場合の追加費用を先に聞いておいてください。
事前に分かる手がかりもあります
開ける前でも、次の4つから推測できることがあります。
- 墓誌(霊標):お墓の横に立つ石板。納められた方の戒名と没年が刻まれています
- お寺の過去帳:菩提寺に記録が残っていることがあります
- 埋蔵証明書:墓地の管理者に発行を依頼する際、記録を確認してもらえます
- 親族の記憶:年長のご親族ほど、納骨に立ち会った記憶をお持ちです
ただし、墓誌に名前があっても遺骨が残っているとはかぎりません。土に還っている場合があるためです。次の項でお伝えします。

骨壺がないことがあります|土に還っている遺骨の扱い
古いお墓を開けると、骨壺ではなく土砂だけが出てくることがあります。驚かれる方が多いのですが、珍しいことではありません。
カロートの中の納め方に、法令の決まりはありません
理由は納め方が自由だからです。全日本墓園協会が厚生労働科学研究にもとづいてまとめた墓地の経営・管理に関するFAQでは、カロート内への焼骨の納め方について法令による規制がなく、方法は墓所の使用者や管理者の考え方に委ねられると説明されています。
同じ資料では、対応の例として骨壺から焼骨を取り出してカロート内に撒く方法や、布袋への移し替えが挙げられています。実際にそうしてきたお墓では、年月とともに遺骨が土に還ります。
地域によっては、はじめから骨壺を使わずに納める慣習もあります。関西では、骨壺からさらし袋に移して納める形が見られます。この場合、古い遺骨ほど土と混ざりやすくなります。
土に還っていた場合はどうするか
遺骨の形が残っていないときは、その周辺の土をすくって受け皿へ移すのが一般的な扱いです。石材店が作業の中で対応してくれます。
この場合、受け皿は土ごと受け入れてくれる形にかぎられます。合祀墓、あるいは土に還す型の樹木葬が現実的な選択肢。骨壺のまま納める納骨堂は、土砂では受け入れてもらえないことがあります。

70代男性

案内役
遺骨の行き先6つ|費用と必要な下ごしらえで比べる
行き先は大きく6つです。費用だけでなく「先に何をする必要があるか」で比べてください。ここを見落とすと、契約後に追加の手間と費用が出ます。
| 行き先 | 費用目安 | 下ごしらえ | 取り出し |
|---|---|---|---|
| 合祀墓 | 5〜30万円 | 洗浄・乾燥のみのことが多い | できません |
| 個別の永代供養墓 | 50〜150万円 | 骨壺のサイズ指定がある場合も | 期間内は可 |
| 樹木葬 | 5〜100万円 | 土に還す型は粉骨が要ることも | 型による |
| 納骨堂 | 10〜150万円 | 骨壺のまま。土砂は不可のことも | できます |
| 散骨 | 5〜30万円 | 粉骨が前提 | できません |
| 手元供養 | 数千円〜 | 小さな骨壺なら粉骨が要ることも | できます |
受け皿を決めると、必要な下ごしらえが決まります
土に埋まっていた遺骨は湿っていたり、土がついていたりします。受け皿に納める前に必要になります
散骨では、焼骨を形状が分からない粉状にすることが国のガイドラインで示されています
ただし骨壺のサイズ指定がある施設があります。契約前にご確認ください
樹木葬は「粉骨して土に還す型」と「骨壺のまま納める型」があります。同じ名前でも中身が違います
散骨で粉骨が前提になるのは、国の基準があるためです。厚生労働省の散骨に関するガイドラインは、焼骨を形状を視認できないよう粉状にすることを示しています。
それぞれの形式の中身をもっと詳しく比べたい方はお墓を建てない供養の選択肢7つ|費用と特徴を比較をご覧ください。樹木葬と納骨堂は樹木葬の費用と種類を比較、納骨堂の費用相場とタイプ別比較にそれぞれまとめています。

散骨を行き先の候補に入れる場合は、業者に粉骨から任せられます。費用の目安は依頼先で変わるため、先に見積もりを取って比べてください。
散骨の法的な位置づけと業者選びの基準は散骨の方法と費用|法律・条例と業者選び5つの基準で詳しくお伝えしています。
全部を同じ場所にしなくてかまいません
遺骨は分けられます。すべてを一つの受け皿に納めなければならない決まりはありません。ここを知らずに、全部を合祀にして後から悔やむ方がいます。
組み合わせの例
実際には、次のような分け方が選ばれています。
- ご両親は樹木葬、古い先祖は合祀墓へ:顔を知る方は個別に、それ以前はまとめる
- 大部分は合祀墓、ほんの少しだけ手元に:費用を抑えつつ、手を合わせる先を残す
- きょうだいで分ける:それぞれの住まいの近くで供養する
費用の面でも合理的です。体数が多いお墓では、全部を個別の永代供養墓に納めると高額になります。顔を知るご家族だけ個別にして、それ以前を合祀にすれば、総額をかなり抑えられます。
分けるときの書類には、決まった様式がありません
遺骨を分ける場合、墓地の管理者から書類を出してもらいます。施行規則の第5条は、墓地等の管理者に対し、分骨を他へ納めようとする方の請求があったときは埋蔵または収蔵の事実を証する書類を交付しなければならないと定めています。
ただし前出の資料によると、この書類は「埋蔵証明書」または「分骨証明書」と称して墓地管理者が任意に発行するのが一般的で、様式は法令により定められていません。受け入れ先が求める記載事項を先に確認し、それを管理者に伝えるのが確実です。
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手元供養と散骨は、改葬許可が出ないことがあります
行き先によっては、改葬許可がそもそも出ません。「墓じまいには改葬許可が必要」と一律に説明されることが多いのですが、実務はもう少し分かれます。
法律の「改葬」は、移す先が決まっています
墓地、埋葬等に関する法律の第2条第3項は、改葬を「埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を、他の墳墓又は納骨堂に移すこと」と定めています。移す先は墳墓か納骨堂。自宅や海は、そのどちらにもあたりません。
この点について前出の資料は正面から扱っており、自宅安置や散骨を目的とした焼骨の取り出しは墓埋法が想定していない行為であり、改葬許可は交付できないと説明しています。第10章でも、散骨目的の取り出しは改葬にあたらないと考えられるとしたうえで、市町村役場で相談するよう勧めるべきとされています。
- 永代供養墓・合祀墓へ移す
- 樹木葬へ移す
- 納骨堂へ移す
- 同じ霊園の別の区画へ移す場合も改葬にあたります
- 手元供養として自宅に安置する
- 散骨する
法律の「改葬」は、他の墳墓または納骨堂へ移すことを指します。自宅や海は、そのどちらにもあたりません。
扱いは自治体で分かれます。遺骨を取り出す前に、今のお墓がある市町村の窓口へご相談ください。
自宅に置くことを禁じる規定はありません
手元供養を「法律違反ではないか」と心配される方がいます。同法の第4条第1項が禁じているのは「埋葬又は焼骨の埋蔵」を墓地以外の区域で行うこと、つまり土に埋めることです。
室内に安置することは埋蔵にあたりません。自宅に置くこと自体を禁じる規定は、この法律にはないと解されています。庭に埋めることは埋蔵にあたるため、これはできません。
とはいえ、扱いは自治体によって分かれます。遺骨を取り出す前に、今のお墓がある市町村の窓口へご相談ください。「墓じまいをして、一部は手元に残したい」と具体的に伝えると、必要な手続きを教えてもらえます。


50代女性

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証明書をもらえないときの進め方
埋蔵証明書を出してもらえなくても、進める道はあります。離檀の話がこじれ、お寺が発行に応じてくれないという相談は実際にあります。
条文に「これに準ずる書面」の定めがあります
施行規則の第2条第2項第1号は、管理者が作成した埋蔵の事実を証する書面について、条文でこう定めています。「これにより難い特別の事情のある場合にあつては、市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面」でよい、と。
前出の資料は、この代替手段として除籍簿や戸籍などの公的資料、埋蔵の事実を明らかにする書面、申請者による説明書を挙げています。証明書がないことだけを理由に、手続きが行き止まりになるわけではありません。
離檀料に、法的な支払い義務はありません
あわせて知っておきたいことがあります。離檀料は、これまでお世話になったお礼という性質のもの。法的な支払い義務はありません。
高額を請求されて話が進まない場合は、国民生活センターや消費生活センター、弁護士へご相談ください。費用の内訳は墓じまいの費用はいくら?相場と内訳を分かりやすく解説にまとめています。
すぐ決められないときは|一時預かりと自宅安置
期限に追われて行き先を決める必要はありません。工事の日程が迫っていても、遺骨の置き場所は別に考えられます。
一時預かりを使う
寺院や霊園、納骨堂の中には、行き先が決まるまで遺骨を預かってくれるところがあります。数か月から年単位まで、期間の設定はさまざまです。預かり期間と、その後に自動で合祀になるかどうかを契約前に確認してください。
いったん自宅に置く
前の項でお伝えしたとおり、自宅に安置することを禁じる規定はありません。ご家族で話し合う時間が要るときは、いったん持ち帰るという選択も現実的です。
その際は、火葬許可証や改葬許可証などの書類を遺骨と一緒に保管しておいてください。将来どこかへ納めるときに必要になります。
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ただし、先送りにしたまま次の世代へ渡すと、同じ悩みを引き継ぐことになります。期限はなくとも、方針だけは元気なうちに決めておくことをおすすめします。お墓を残すか畳むかで迷っている段階の方は永代供養と墓じまいの違い|どちらか迷う人の4つの判断軸から読んでみてください。
なお、誰が遺骨を引き継ぐか、費用を誰が負担するかで親族の意見が割れる場合は、祭祀承継や相続に関わる問題になります。話し合いがまとまらないときは、行政書士・弁護士といった専門家にご相談ください。
よくある質問
遺骨が何体あるか分からないまま、墓じまいを申し込めますか。
申し込めます。先祖代々のお墓では体数が分からないことがほとんどです。ただし受け皿の費用は体数ぶんかかることが多いため、体数が増えた場合の追加費用を先に確認してください。
お墓を開けたら土しか出てきませんでした。どうすればよいですか。
その周辺の土をすくって受け皿へ移すのが一般的な扱いです。石材店が作業の中で対応します。受け入れ先は、合祀墓や土に還す型の樹木葬が現実的です。
遺骨を分けて、別々の場所に納められますか。
分けられます。ご両親は樹木葬、古い先祖は合祀墓、といった組み合わせが選ばれています。分けるときは墓地の管理者から埋蔵の事実を証する書類を出してもらいます。
手元供養にする場合、改葬許可は要りますか。
法律上の改葬は他の墳墓または納骨堂へ移すことを指すため、自宅への安置は対象外とされ、許可が出ないことがあります。扱いは自治体で分かれるため、取り出す前に市町村の窓口へご相談ください。
遺骨を自宅に置いておくのは違法ですか。
自宅に置くこと自体を禁じる規定はありません。墓地、埋葬等に関する法律が禁じているのは、墓地以外の区域で埋葬または焼骨の埋蔵を行うこと、つまり土に埋めることです。庭に埋めることはできません。
お寺が埋蔵証明書を出してくれません。墓じまいはできないのでしょうか。
できないわけではありません。施行規則には、証明書によることが難しい特別の事情がある場合、市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面でよいという定めがあります。まず市町村の窓口へご相談ください。
まとめ|形式を選ぶ前に、現物を確かめる
墓じまい後の遺骨は、合祀墓・個別の永代供養墓・樹木葬・納骨堂・散骨・手元供養の6つに行き先が分かれます。ただし選ぶ順番は、形式が先ではありません。
まず体数を確かめる。骨壺があるか、土に還っているかを見る。そのうえで、下ごしらえが要るかどうかも含めて受け皿を選ぶ。この順番なら、契約後に想定外の費用が出にくくなります。
そして、全部を同じ場所に納める必要はありません。顔を知るご家族は個別に、それ以前は合祀に。分けられると知っているだけで、選べる幅がひろがります。
参考情報・外部リンク
- 公益社団法人 全日本墓園協会|墓地の経営・管理に関するFAQ 第4章(埋蔵・分骨・改葬)(平成28年度 厚生労働科学研究費補助金研究にもとづくFAQ)
- 同 第10章(墓埋法に係わるその他の問題)(散骨を目的とした焼骨の取り出し)
- e-Gov法令検索|墓地、埋葬等に関する法律(第2条第3項 改葬の定義/第4条第1項 埋蔵の場所の制限)
- e-Gov法令検索|墓地、埋葬等に関する法律施行規則(第2条第2項 添付書類/第5条 分骨の際の書類)
- 厚生労働省|散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)(焼骨を粉状にすることについて)
- 厚生労働省|衛生行政報告例(改葬数の統計)
- 独立行政法人 国民生活センター(契約トラブルの相談窓口)
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